煌めく電子の海、インターネットの世界を紹介

YouTubeで動画を見る、LINEでメッセージを送る、Netflixで映画を楽しむ——私たちが当たり前のように使っているインターネット。
しかしその裏側には、海底深くに張り巡らされた光ファイバーケーブルから、あなたのスマホの中で動くプログラムまで、壮大な仕組みが隠れています。
GoogleやFacebookといった巨大企業が何千億円も投じるインフラから、プログラマーが書く数行のコードまで、インターネットの全体像を分かりやすく解説します。
海の底に眠る世界の神経網

あなたがアメリカのサイトを見るとき、そのデータはどうやって日本まで届くと思いますか?
実は、海底ケーブルと呼ばれる太い光ファイバーのケーブルが、海底1万メートルの深さを這うように敷設されているのです。
衛星を使っていると思われがちですが、実際にはインターネットの99%以上のデータは、この海底ケーブルを通って運ばれています。
現在、地球上には500本以上の海底ケーブルがあり、総延長は140万キロメートル。地球を35周できる長さです。
これらのケーブルがなければ、私たちは海外のウェブサイトにアクセスすることも、国際電話をかけることもできません。
GoogleとFacebookが海底ケーブルを作る理由
昔は海底ケーブルといえば、NTTやKDDIのような通信会社が建設していました。
しかし今や状況は一変しています。
GoogleやMeta(Facebookの親会社)といったIT企業が、自分たちで海底ケーブルを建設しているのです。

なぜでしょうか?
答えは簡単で、彼らのサービスがあまりにも大量のデータを使うからです。
YouTubeで毎日10億時間以上の動画が視聴され、Facebookには30億人以上のユーザーがいます。
通信会社のケーブルを借りるだけでは足りないのです。
具体例: Googleが2016年に完成させた「FASTER」という太平洋横断ケーブルは、毎秒60テラビット(= 7,500ギガバイト)のデータを送れます。
これは、フルHD映画なら毎秒2,000本以上を同時に送信できる速度です。
Metaも負けていません。「2Africa」というプロジェクトでは、アフリカ大陸をぐるりと囲む4万5000キロメートルのケーブルを建設中です。
これは地球1周以上の長さ。これらの投資額は、それぞれ数千億円規模になります。
見えないインフラの王者:Cisco
海底ケーブルだけあっても、インターネットは動きません。
あなたの家のWi-Fiルーターから、会社のオフィス、そしてデータセンターまで、データを正しい場所に届けるための「交通整理」が必要です。
この役割を果たすのが、ルーターやスイッチと呼ばれる機器です。
そして、この分野を圧倒的に支配しているのがCisco(シスコ)というアメリカの会社です。
世界中のインターネットプロバイダー、大企業、データセンターの多くがCiscoの機器を使っています。
いわば、インターネットの「見えない王者」です。

あなたがウェブサイトにアクセスするとき、データは何十台ものCiscoのルーターを経由して届きます。
まるで、宅配便が何個も配送センターを経由して届くのと同じです。
Ciscoはこの仕組みを作り、世界中に販売することで、インターネットインフラの中核を握っているのです。
プログラムがネットワークと話す「窓口」

さて、ここからは少し視点を変えて、プログラマーの世界を覗いてみましょう。
私たちが使うアプリやウェブサイトは、どうやってインターネット経由でデータをやり取りしているのでしょうか?
住所と部屋番号:IPアドレスとポート
インターネット上の機器には、それぞれIPアドレスという「住所」が割り当てられています。
例えば192.168.1.1のような数字の羅列です。
これは、現実世界の郵便番号のようなものだと思ってください。
でも、1台のパソコンでは同時にたくさんのアプリが動いています。
ブラウザ、LINE、Spotify……。これらを区別するために、ポート番号というものが使われます。
IPアドレスが「マンションの住所」だとすれば、ポート番号は「部屋番号」です。
メールは「25番」、LINEやZoomは独自のポート番号を使っています。
ソケット:プログラムとネットワークをつなぐドア
プログラマーがネットワーク通信を行うとき、ソケットという仕組みを使います。
ソケットは、プログラムとインターネットをつなぐ「ドア」のようなものです。

難しく聞こえるかもしれませんが、実は単純です。
プログラムが「このIPアドレスのこのポート番号にデータを送りたい」と言えば、ソケットが海底ケーブルやルーターを経由して、自動的にデータを届けてくれます。プログラマーは、データの中身だけ考えればいいのです。
実際のプログラムを見てみよう
プログラミングに馴染みのない方には難しく見えるかもしれませんが、実は簡単なWebサーバーは数行で書けます。
以下はPythonという言語での例です。
# シンプルなWebサーバーのプログラム
import socket
# ネットワークの「ドア」を開く
server = socket.socket()
server.bind(('0.0.0.0', 8080)) # 8080番ポートで待機
server.listen(5) # 最大5人まで同時接続OK
print("サーバー起動!ブラウザでアクセスしてね")
while True:
# 誰かが訪問してきたら
client, address = server.accept()
print(f"{address}から接続されました")
# 訪問者にメッセージを返す
message = "Hello, World!"
client.send(message.encode())
client.close()
これだけで、ブラウザからhttp://localhost:8080にアクセスすると「Hello, World!」が表示されます。たった15行程度のコードで、インターネット通信ができてしまうのです。これがソケットの力です。
速いけど不安定 vs 遅いけど確実:2つの配送方法

インターネットでデータを送る方法には、大きく分けて2種類あります。TCPとUDPです。これは、宅配便でいう「通常配送」と「速達」の違いに似ています。
| 特徴 | TCP(確実配送) | UDP(高速配送) |
|---|---|---|
| 到達保証 | ✅ 必ず届く。途中で失くなったら再送 | ❌ 届かないこともある |
| 順序 | ✅ 送った順番通りに届く | ❌ 順番がバラバラになることも |
| 速度 | ⚠️ やや遅い(確認作業があるため) | ✅ 速い |
| 使われる場所 | ウェブサイト、メール、ファイルダウンロード、SNS | 動画配信、オンラインゲーム、ビデオ通話 |
TCPは丁寧な郵便配達
TCPは、確実にデータを届けることを最優先にします。
送信者は「データを送ったよ」と言い、受信者は「確かに受け取ったよ」と返事をします。
もしデータが途中で失くなったら、自動的に再送してくれます。
ウェブサイトを見るとき、画像やテキストが欠けていたら困りますよね。だからブラウザはTCPを使います。
メールやファイルのダウンロードも同じです。多少時間がかかっても、確実に届くことが重要なのです。
UDPはスピード重視の速達便
一方UDPは、速度を最優先にします。
「送りました」だけ言って、届いたかどうかは確認しません。まるで、投げっぱなしの速達便です。
なぜこんな乱暴な方法があるのでしょうか?
それは、NetflixやYouTubeのような動画配信に向いているからです。動画は1秒間に30枚の画像を表示します。
もし1枚や2枚欠けても、人間の目にはほとんど分かりません。それよりも、カクカクせずスムーズに再生されることの方が大事です。
オンラインゲームも同じです。
「敵が今どこにいるか」という情報は、0.1秒前のデータよりも、多少不正確でも「今この瞬間」のデータの方が価値があります。
だからUDPが使われるのです。
見えない階層構造:インターネットは7階建てのビル
ここまで、海底ケーブルからプログラムまで、いろいろな技術を見てきました。
でも、これらはどうやって協調して動いているのでしょうか?
7つの層が重なる仕組み
インターネットは、7階建てのビルのような構造になっています。
これを「OSI参照モデル」と呼びます。
下の階は物理的なケーブルや電気信号、上の階はあなたが使うアプリです。
7つの階層(下から順に):
- 物理層 – 光ファイバーや電波など、実際に信号を運ぶ部分
- データリンク層 – 隣の機器とデータをやり取りする(Wi-Fiなど)
- ネットワーク層 – IPアドレスを使って宛先を探す
- トランスポート層 – TCPやUDPで確実性と速度を調整
- セッション層 – 通信の開始と終了を管理
- プレゼンテーション層 – データの形式を変換(暗号化など)
- アプリケーション層 – ブラウザやメールアプリなど
詳細はこちらの記事でも。
この7階建て構造のおかげで、各階は自分の仕事だけに集中できます。
1階の物理層の人は「電気信号を正確に送る」ことだけ考え、7階のアプリ開発者は「ユーザーに便利な機能を提供する」ことだけ考えればいいのです。
まるでマンションの各階が独立して機能するように。
プログラムで自動化する時代
昔は、ネットワーク機器の設定は人間が手作業で行っていました。
しかし現代のデータセンターには、数千台のサーバーと数百台のルーターがあります。
もはや人間の手には負えません。
そこで登場したのが、プログラムによる自動設定です。
PythonやGoといったプログラミング言語を使って、ネットワーク機器を自動的に設定したり、障害を検知したり、トラフィックを最適化したりします。
例えば、Netflixは世界中に何千台ものサーバーを持っています。
どのサーバーをどの地域の視聴者に使わせるか、プログラムが自動的に判断しています。
人間が手動で設定していたら、動画が再生されるまでに何時間もかかってしまうでしょう。
未来はもっとソフトウェア化される
インターネットの未来は、さらに「ソフトウェア化」していきます。
従来は物理的なルーターやスイッチが担っていた役割を、ソフトウェアで実現する動きが進んでいます。

例えば、5Gネットワークでは「ネットワークスライシング」という技術が使われます。
1本の物理的なケーブルを、仮想的に複数のネットワークに分割するのです。
自動運転車には超低遅延のネットワーク、動画配信には大容量のネットワーク、IoTセンサーには省電力のネットワーク——すべて同じ物理インフラ上で実現します。
これを可能にするのは、やはりプログラミングです。
ネットワークエンジニアは、もはやケーブルを這わせるだけの仕事ではありません。
コードを書き、アルゴリズムを最適化し、AIで障害を予測する——そんな時代になっているのです。
まとめ:巨大なインフラと緻密なコードが作る世界

YouTubeを開く、その0.5秒の間に、何が起きているのでしょうか?
あなたのスマホのアプリは、ソケットというドアを開きます。
データは家のWi-Fiルーターを通り、インターネットプロバイダーのルーターに届きます。
そこから、いくつものCiscoの巨大なルーターを経由し、場合によっては太平洋の海底1万メートルを光の速度で駆け抜けます。
そしてカリフォルニアのGoogleのデータセンターに到達し、あなたが見たい動画を取り出して、同じ道を逆戻りしてきます。
この壮大な旅を支えているのは、数千億円規模の海底ケーブル投資であり、世界中に張り巡らされたCiscoの機器であり、そして何千人ものプログラマーが書いた何百万行ものコードです。
物理的なインフラと、抽象化されたソフトウェア。この両方が完璧に協調することで、私たちは「ただボタンを押すだけ」で世界中の情報にアクセスできるのです。
インターネットは魔法ではありません。
しかし、人類が作り上げた最も複雑で、最も美しいシステムの1つです。
海底ケーブルからソケットまで、その全体像を知ることで、私たちは毎日使っているインターネットの真の価値を実感できるのではないでしょうか。
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